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舞台の華について

舞台の華について

演奏家の方が技術と共に悩むのが、舞台での華ですね。

演奏が上手な方以上に華のある演奏家は少ないです。

華があればこんなに苦労しないのに、そう思われている方も多いと思います。

美貌なのか、スタイルなのか、自信なのか?


先日声楽の先生の発表会の調律をさせていただきました。

先生は素晴らしく華のあるお方です。


かなり以前の事を書かせていただきますが、

急な代役の仕事でコンサート調律をさせていただいたことがありました、

しらない歌手が歌われていました、歌も華も凄すぎてお名前も知らす、

それきりでしたが、数年後、その歌手の方からご依頼がありました。

それが今回の声楽の先生でした。


とんでもない美貌がある訳でもなく、8頭身のモデルでもなく、世界の歌劇場を回ったキャリアも多分ありません。

しかし、普通の方がいったん歌い始めると空気が一変します。

あれは何でしょうか、性能を出し切る時の生命力、魂が体から離れて空間を包む感じです。

立ち姿、振る舞い、表情、どこから見ても完璧に見えます。

エレガントそのものです。

もっと驚くのは、生徒さんに添って歌うと生徒さんにも華が移って倍くらい声が出るように見え、

生命力が限界まで出し切れているように見えます、華が移るんですね。


この特別なレッスン、先生も生徒さんもお気づきにはならず、自然なな行いなんです。

生命力を限界まで出し切りますと、

自分自身がマイナスと思っている部分が味に変わるんです。

太っている>安定感 痩せている>ピュア

美しくないと思い込んでいる顔>生きざまを刻んだ歴史

舞台映えしない仕草>後ろに見える厚い存在感

年齢、病気、体力>身を削る消えまいとするの鮮烈な光

力、音量>譜面をめくる音も聞こえるのがホールです、音量でなく力感、鳴り切り感です。


アスリートとも違うんですが、

体を鳴らしきる生徒さんの仕草が、

人間の本能、生命力の限界に持ってくる自然な動作でまとまっています。

それが醜い場合と美しくなる場合、それは先生がけん引するので美しくなります。

衝撃的な出来事でした。


ですから、華は容姿でもスタイルでも、作られた笑顔も仕草でもありません。

生命力を美しく出し切ることだと感じました。

生きているってこういうことなんだと美しさをもって実感させることです。


この感覚をお伝え出来る自信はありません。

食べ物なら、生のミントの葉を口に含んだ時の感じと言いましょうか。

車なら、性能を出し切る時のむせび泣くエンジンでしょうか。

これだよこれ、欲しかったのは!

そう思える物です。



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Author:ノブ
こんにちは、ピアノの調律師の谷口です。ピアノの関する情報と、イタリア音楽など関するホームページを作っています。ぜひ立ち寄ってください。

10.10.2011~